Project Story 02

世界初のフルスケール

CCSプロジェクト

Project Member

  • 関谷 清

    Kiyoshi Sekiya

    “K”Line LNG Shipping (UK) Ltd.
    2010年キャリア採用
    (2024年取材当時、入社15年目)

    再エネ事業チームのチーム長として、本プロジェクトをスタート。液化CO2船の定期傭船契約締結後、
    2023年4月、ロンドンに赴任。現部署に配属され、本プロジェクトに携わる。

  • 三枝 真一郎

    Shinichiro Saegusa

    “K”Line (Europe) Ltd. ロンドン
    2001年新卒採用
    (2024年取材当時、入社24年目)

    オスロへの長期出張ベースで、欧州で再エネ関連の組織を立ち上げる準備を行い始めた後、2022年6月にロンドンに赴任。現部署に配属され、本プロジェクトに携わる。

  • 三好 雄大郎

    Yutaro Miyoshi

    液化ガスグループ 
    CCS事業チーム
    2008年新卒採用
    (2024年取材当時、入社17年目)

    2020年より再エネ事業チームにて主担当としてCCSに携わり、本プロジェクトスタート当初より、入札〜契約交渉に携わる。液化CO2船の定期傭船契約締結後、現在は東京から運航支援、ノルウェー法人の会社管理等の業務を担っている。

  • 浜岡 知哉

    Tomoya Hamaoka

    液化ガスグループ 
    CCS事業チーム
    2022年キャリア採用
    (2024年取材当時、入社3年目)

    異業種より当社に転職後すぐに本プロジェクトにアサインされ、以来、三好とともに入札〜契約交渉に携わる。現在も三好とともに東京で本プロジェクトの業務を担っている。

2050年のカーボンニュートラル達成に向けた、CO2削減が世界のコンセンサスとなっている。
そんな中、CO2の回収・貯留(CCS)の実行に必要な手段として期待されているのが、液化CO2の海上輸送だ。
“K”LINEは、Northern Lights社向け液化CO2船の定期傭船契約を締結。2024年より世界初のフルスケールCCSプロジェクトに従事する。
Northern Lights社との契約交渉、液化CO2船の運航準備に奔走する、本プロジェクトメンバーの軌跡を追った。

Story 01

液化CO2船のノウハウのもと、
未知のプロジェクトに挑む

再エネ事業チームのチーム長として、CCS(CO2の回収・貯留)向けの海上輸送事業の開発に取り組んでいた関谷は、Northern Lights社向け液化CO2船の長期契約の入札の話が飛び込んできた時、大きなチャンスの到来に胸を高鳴らせた。「当社は2021年から、日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の液化CO2の船舶輸送に関する研究開発・実証事業に参画し、他社に先んじてそのノウハウを蓄積しています。このチャンスを見逃すわけにはいきません」
また、関谷のもと、主担当としてCCSの事業開発に携わっていた三好は語る。「これまでCCSにおけるCO2輸送はパイプラインで行われるものだけだったが液化CO2の海上輸送を伴うCCSにチャレンジするのはNorthern Lights社が世界で初めて。何としても、パートナーとして当社を選んでいただき、“世界初のフルスケールCCSプロジェクト”に従事するチャンスをつかみたいと思いました」
一方、2022年に異業種から転職してきたばかりだった浜岡は、戸惑いを隠せなかった。「海運ビジネスに関する知識が全くない段階で、当社としても初のプロジェクトにアサインされ、右も左もわからず……(苦笑)。一般的な海運ビジネスとはどんなものかを学びつつ、CCSプロジェクトがそれにどう関連していくのかを理解していきました」

Story 02

ロンドンー東京でうまく連携し、
入札への準備を進める

その頃、欧州に長期出張していた三枝はローカルスタッフとともに、欧州での再エネ関連の組織の立ち上げ準備をしつつ、Northern Lights社へのアプローチを始めていた。そんな中、三枝が初めて、ノルウェーのNorthern Lights社を訪問したのは、2022年初頭のことだ。「アピールしたのは、CCSに関するこれまでの当社の取り組みはもちろん、当社が長きにわたって、液化CO2船と運航技術面で近しいLNG船(液化天然ガス船)の船舶管理に取り組み、欧州でのLNG船運航実績を十分に持っていること。また、2006年に開始したノルウェー初のスノービットプロジェクトからのLNG輸送にも携わり、Northern Lights社の株主である、オイルメジャーのEquinorから評価を得ていることも伝えました」 その結果、好意的な反応を得て、今後もコミュニケーションを続けていくこととなった。

その後、2022年6月に三枝はロンドンに赴任。三枝が現地でつかんだNorthern Lights社の情報のもと、東京側のメンバーは入札に向けた準備を進めていった。三好は言う。「入札に当たっては確度の高い情報が欠かせません。どういった内容の入札を実施するのか、Northern Lights社が欲するものとは何なのか……。ロンドンー東京のチームでうまく連携していくことで、スムーズに準備を進めることができました」

Story 03

約10社の競合他社に競り勝ち
有力候補先の一社に選ばれる

プロジェクトチームが苦労しながら、Northern Lights社との交渉や、入札書類の準備を進めていく中、それと同じくらい苦労したのは、社内の承認を得ることだった。「当社にとって液化CO2船は新しい船種。2022年時点ではCCSへの理解が社会的にも進んでいないこともあり、当初はプロジェクトに対して懐疑的な意見がありました」と関谷は言う。そこでプロジェクトチームは、経営陣に納得してもらうために、今後の欧州での液化CO2船市場の見通し、液化CO2輸送における当社の強み、想定されるリスクに対する対策など、定性定量両面での分析を行った。

社内の承認を得るための取り組みと並行して、プロジェクトチームはNorthern Lights社とのコミュニケーションを続けながら、プロジェクトの経済性の試算、お客様が求める船員の配乗計画の検討などを行った。そして入札書類・金額をつくり上げ、それらを提出したのは7月。入札準備を始めた当初は、LNG船等の液化ガス船の運航実績を持つ、約10社の競合が存在したが、翌月の8月には有力候補先が数社に絞り込まれ、その中に当社は残った。Northern Lights社との本格的な交渉が始まったのはここからだった。

Story 04

タフな契約交渉の末、
液化CO2船2隻の長期契約を締結

契約交渉期間は、9月〜12月までの約4カ月間。その間、プロジェクトチームは、週2回のWEB面談を行うとともに、月1回はノルウェーのNorthern Lights社を訪れ、対面での対話も行った。そうした中、Northern Lights社と地理的に近いロンドンにいる三枝が心がけたことがある。「面談後、お客様とさらに話をして、本当は何を言いたかったのか、その真意を見極め、随時、それを東京側のメンバーにフィードバックしました」
契約交渉において、プロジェクトチームが大切にしていたのは、できる限り、お客様の要望に応える努力を行う一方、「できること、できないこと」の線引きをしっかり行うことだ。関谷は語る。「競合他社が、『できません』と即答するような要求に対しても、当社はどうしたらできるのか、みんなで徹底的に議論し、現実的な提案に落とし込み、さらに『ここまでならできる』、『これ以上はできない』と丁寧に説明していきました」

こうしたタフな交渉を通して、プロジェクトメンバーは自分たちの提案に自信を深めていく。三好と浜岡は回想する。「それまでは、果たしてノルウェーの事業に日本の船会社が参加できる余地はあるのか、と少々疑問を抱いていました。しかし、私たちがお客様と真剣に向き合う中で、お客様の当社への信頼がどんどん高まっていくことが肌で感じられるようになりました」
そうした真摯な姿勢が評価された結果、2022年12月、当社はついに、Northern Lights社と、2024年に運航開始となる液化CO2船2隻の長期契約を締結するに至った。

CCSの主な流れ

Story 05

契約締結から運航開始まで、
想定外の課題の解決に向き合う

液化CO2船2隻の長期契約を締結した際、関谷は一息つくと同時に、身を引き締めていた。元々、契約にはフレキシビリティが求められており、「新しいプロジェクトなので、運航や荷役の手順などを一緒につくり上げていきましょう」とのお客様との合意がある。そのため、実際の運用に向けた準備段階でも苦労は続くはずだ。「必ず予想通りにいかないこともたくさん出てきます。それらをどう解決していくか、知恵を絞らなければなりません」
2023年1月から、プロジェクトチームは、契約段階では詰めきれなかったことや、想定していなかった課題の解決に向けた取り組みをスタートした。例えば船にかける保険の手配もその一つ。「本プロジェクトは、ノルウェー政府の補助金を得ているため、通常のやり方とかなり異なります。そこでノルウェーの弁護士や保険会社の方に相談するなど、試行錯誤しながら手配を進めていきました」と浜岡は言う。

2023年4月、関谷はロンドンの“K”Line LNG Shipping (UK) Ltd.に異動。ロンドン側で、三枝とともにプロジェクトを担うことになった。液化CO2船2隻の運航を開始するに当たって、関谷が最も苦労したのは、乗組員の確保だ。「新しい船であるがゆえに、乗組員にとって不安なのは、どういう船なのか、どんなオペレーションを行うのかがわからないこと。そのため一人ずつ、候補となる乗組員に話をしながら採用していきました」

Story 06

液化CO2船2隻が竣工。
フルスケールCCSプロジェクトのスタートへ

2024年11月、12月に相次いで、液化CO2船2隻が竣工。現在は中国の造船所からノルウェーに向かって航行している。当社の真価が問われるのは、ノルウェーに到着し、実際に液化CO2の海上輸送が始まった時だ。

プロジェクトメンバーはそれぞれ、今後の展望について次のように思いを馳せる。
「本プロジェクトを軌道に乗せることが目下の目標。今回、立ち上げから実行段階まで経験したことが、将来的には他の新事業においても生かせるのではないかと思います」(関谷)
「本プロジェクトは、CCSを目的とした、世界初のCO2海上輸送であり、世界中の注目が集まっています。当社として、しっかり立ち上げていくことでお客様、取引先の皆様からの信頼をより強固にし、後続液化CO2船案件獲得につなげていきたいです」(三枝)
「今回のプロジェクトを皮切りに、当社として液化CO2船の船隊を拡大し、CCS向けの海上輸送事業を当社の柱にしていきたいと思っています」(三好)
「Northern Lights社以外の案件も今後出てきますので、本プロジェクトで得られた経験を生かし全世界で当社関与船を増やしていきたいですね」(浜岡)

きみは、世界どうつなぐ?