Project Story 01

鉄鋼原料グループ

〜新造船竣工まで〜

Profile

  • 南埜 智之

    Tomoyuki Minamino

    鉄鋼原料営業グループ 鉄鋼原料営業第一チーム
    2018年新卒採用
    (2024年取材当時、入社7年目)

    入社後、鉄鋼原料運航グループに配属。3年目に現在の営業グループに異動し、現在は鉄鋼メーカー複数社を担当している。

営業のミッションの一つは、顧客のさらなる輸送需要に対して積極的に新造船の提案を行い、新規契約を獲得すること。
では具体的には、新規契約の獲得〜新造船竣工まで、どのような取り組みを行っているのか。
新造船プロジェクトを成功に導くまでの南埜の姿を追った。

Story 01

最新鋭の船を使用する、
貨物輸送契約を提案

鉄鋼メーカーのお客様A社を担当する南埜は、日々の営業活動を通して常にお客様のご要望やニーズをヒアリングしている。その中で新規の輸送需要をつかんだ南埜は、既存契約が終了するタイミングで思い切った提案を試みた。その提案内容は、省エネルギーで高い効率で安定した原料輸送が実現できる、新設計の最新鋭の船を長期にわたって使用していただくというものだ。

「一緒に新しい技術に取り組んでいきましょう、という提案ができるのは、A社と当社の長年にわたる信頼関係のベースがあるからこそ。また、環境問題と脱炭素に対する取り組みは、どのお客様にも共通したニーズであり、A社も興味を持ってくださいました」

しかし、新技術への取り組みは、お客様にとってもチャレンジングであり、懸念点はつきまとう。南埜はチームのメンバーとともに、社内の関連部署に協力を得ながら、現時点での情報に基づいて当社なりの絵を描き、資料に落とし込み、それをもとにA社に説明。懸念点を一つひとつ払拭し、A社の理解を得るに至った。こうして新設計の“最新鋭”の船をつくる、「新造船プロジェクト」がスタートした。

Story 02

社内の各部署、造船所と協業し、
最適な企画を立案する

A社に提案した新造船は、新設計の“最新鋭”の船であることに加え、その船型は、ケープサイズと呼ばれるバラ積み船で、一度に約20万トンもの貨物を輸送できる大型船である。したがって、金額規模も桁違いに大きい。当社にとっても巨額投資になるため、そのプロジェクト実現に向けた取り組みの難易度は非常に高い。

南埜はまず、事業環境や収益性、将来リスクなどの検討を十分に行い、経営企画グループにも適宜アドバイスをもらいながら、会社の事業方針に基づいて企画立案を進めていった。さらに技術部門とはプロジェクトの進捗状況を共有し、新造船の発注前から、船をより良いものにすべく、設計や仕様についての協議を重ねた。また、財務部門とも密に連携し、資金調達の方法、将来の為替や金利についての見通しについての協議を行った。

これらと並行して重要になるのは、造船所とのコミュニケーションだ。「納期やコストについて交渉をしていくのですが、話し始めて発注までには1年はかかります。その間、資材の価格高騰、輸送需要の高まりを受けた船台(船体を載せる台)の逼迫など、条件が変わる中で、船価の交渉をしながら、その一方で造船所に船をつくる材料や体制などは確保してもらわなければなりません。造船所はいわば同じゴールを目指す仲間。協力をしていただく分、長期貨物輸送契約をしっかり取りに行くのが我々の使命となります」
南埜はこうして最適な企画へと練り上げていく中、お客様と何度も面談を重ね、納期・コストに関して共通の理解を築くとともに、さらに需給や要望のヒアリングをしながら契約交渉を進めていった。

Story 03

お客様との信頼関係を深めつつ、
契約交渉を進めていく

契約交渉中は、お客様とのタフなやりとりが続く。経営企画、技術、財務などの各部門と連携しながら、お客様からのプロジェクトに関する様々な問いや要望に迅速に応えつつ、こちらからも「当社の提案は他社の提案と比べてどうなのか?成約するにはどのような条件が必要か?…」などと深掘りする。この繰り返しだ。「そこで最も知恵を絞るのは、お客様に対して、いかにより競争力のあるスキームを提供し、また船の収益性の最大化を目指すか。そのための工夫を重ねました」
そうした中、自身が向き合うA社の担当者とは深い信頼関係が構築されていく。「お客様の中で長期契約を決めるに当たって、担当者の方は社内での説明を行う必要があります。そこをサポートできる情報を提供するなど、一緒になってプロジェクトの承認を得ていく関係になりました」

一方、南埜にとっても、社内に上程するプロセスは、クリアすべきハードルである。為替などの諸条件にもよるが、船価は約100億円にのぼる。その巨額投資の決定には、社長決裁が必要となるのだ。「社内に上程していくに当たっては、経営企画グループに、どういう上程の仕方がいいか、どういう切り口で経営陣に説明するとスムーズか、などを相談しながら、説明のための資料づくりを行いました」

Story 04

契約締結後、船の建造期間を経て、
待望の新造船の竣工へ

無事に社内決裁も下り、契約交渉の末、長期貨物輸送契約が締結されたのは約1年後のことだった。「私自身、営業として初めて獲得した長期の契約だったこともあり、とても嬉しかったですし、一安心もしました」。
この時、南埜の脳裏に浮かんだのは、プロジェクトに協力してくれた多くの人たちの顔だった。「社内のいろんな部署の協力をもらいましたが、その中では時にお互いの考え方や意見がぶつかり合うことも。しかし、対話を通じて課題を一つひとつ解決してプロジェクトを進めていくことができました。また、造船所や銀行関係の方々などにも様々な面で尽力していただき感謝しています。それら多くの方々に良い報告ができるなと思いました」
契約締結後、造船所への発注が決まると、船の仕様を詰めていく。「技術部門と連携しながら、この仕様にしたら、どれくらいの燃費改善、費用対効果があるかなどを見ながら、仕様を決めていきます。そして発注後は、新造船の保有形態や船籍、管理会社などを決定します」。その後、メインとなって建造を進めていくのは技術部門の役割となる。

竣工を迎えたのは、2年後。竣工式には、お客様、造船所の方々、銀行関係の方々など、多くの関係者が一堂に会した。華やかな式典が進む中、南埜は真新しいケープサイズの大型船を仰ぎ見て、喜びを噛み締めた。そして同時に、次なるステップへの意欲を燃やしていた。「プロジェクトマネジメントのスキルをより高め、リーダーシップを発揮できるよう努め、さらなる輸送需要や、環境負荷の低減に貢献し、世の中の発展に寄与していきたい。また、新燃料船や新船型にも積極的に取り組んでいきたい」と。南埜、そして当社の挑戦は続いていく。

きみは、世界どうつなぐ?