航海士
⼆等航海⼠
権⽥ 悠杜
海上勤務
入社7年目
YUTO GONDA
※所属部署・入社年次・記事内容は、取材当時のものです。
航海士の仕事
航海当直
船橋にて操船や見張りを行いつつ、航海計器の確認や他船・関係機関との交信などを行う。難所と呼ばれる航路に限らず、常にレーダーや双眼鏡などの機器と五感を駆使し、安全な航海を実現する。
航海計画の立案
どのような航路を通り、どこで変針し、どこを進むか、といった航路計画を立てるのは二等航海士の仕事。船の安全と経済的な運航の両立を目指して計画していくため、責任感とやりがいが大きい。
航海計器・無線設備の保守点検
ジャイロコンパス、速力測定用計器、水深測定用計器など、船に関わるさまざまな数値の計測を行う機器と、外部との連絡手段となる無線設備の保守・点検作業を行う。
IT機器の管理
現在は海図をデータ化した電子海図や、従来紙媒体で管理していた書類のデジタル化が進んでいるため、IT機器の管理も欠かせない業務の一つ。
CAREER
学生時代
両親が海に関する仕事をしており、自然と同じ業界で働きたいと考えるように。商船系の専門学校へ進み、乗船実習で海外へ行ったことでグローバルに働ける海運業界を志望。和やかな雰囲気に惹かれ川崎汽船へ入社。
入社〜現在
世界各国の航路を経験し、直近では二等航海士として新造船の立ち上げに携わる。機器のセットアップやデータの取り込み、航路の検討などを行い、出来たばかりの船で航海を経験。
今後
入社当時からの目標は、船長になること。そのためにマルチな知識が必要だと考え、今後は海上だけでなく陸上勤務も経験したい。多様な考え方やスタイルを取り入れられるよう、海外勤務も視野に入れている。
バラエティに富んだ
船種や貨物の経験を
積むことができる
福岡県の漁師町で生まれ、実家の窓からも海が見渡せるほど海が身近にある環境で育ちました。父方は漁師の家系、母方はタグボート会社を経営していた影響もあり、自然と海に関わる仕事がしたいと思うようになりました。母の勧めで商船高等専門学校の存在を知り、進学を決意。在学中、資格取得に向けた乗船経験を積むために、ハワイへのの航海を含む1年間の乗船実習があり、それがきっかけで海外のいろいろな場所へ行ってみたいと思い、外航海運業界を目指し始めました。もともと飽き性でもあり、さまざまな船種や貨物でバラエティに富んだ経験とスキルを積める総合海運会社を志望。インターンシップや交流会に加え、面接試験でも川崎汽船の雰囲気に惹かれました。学生である自分のことをアットホームな雰囲気で受け入れてくれ、人事や面接官の和やかな人柄が印象的だったことを覚えています。就職活動を通して、一番真剣に私の話を聞いてくれた会社であったことが決め手となり、入社を希望しました。就職活動中に感じた一人ひとりの穏やかさや余裕のある姿勢は、川崎汽船の社員の特徴であると感じています。
新造船の立ち上げに携わる。
緊張の初航海を無事に終えた
入社して4年目で二等航海士になり、最近まで液化ガスを運ぶ新造船に乗船していました。新造船立ち上げに関わる話をいただいた時は、嬉しさと不安が入り混じっていました。新造船の立ち上げは、船が作られて最初に出港するまでに携わり、航海に必要な準備を進めていきます。それまでは航海経歴のある船に乗ることが多かったため、貴重な経験ではあるものの、すべてが初めてというプレッシャーもありました。造船所のある香川県へ赴き、まだ塗装も終わっていない船の中で航海計器の初期セットアップやIT機器のセットアップを担当。電子海図の準備をし、初航海に向けて航海プランの検討も行いました。また、港に入港するために必要な港湾法規の確認、船が保有していなければならない書類の手配、契約といった新造船ならではの業務をこなし、ついに初航海の日。知人から「初めてできた船で太平洋を渡っても問題ないのか」と心配されたこともありましたが、その言葉を私自身が証明していく船出となりました。日本からアメリカまで問題なく航海し港に着くまで、気が休まることはありませんでした。だからこそ、無事に入港できた時は達成感はもちろん、大きな安心感を覚えました。
乗組員一人ひとりが
重要な役割を担う
航海中は長期間、限られた人間関係の中で過ごすため、仕事のことはもちろん他愛ない雑談も含めて積極的に話すことを大切にしています。乗組員は日本人の航海士・機関士合わせて10名ほど、外国人の船員20名ほどの約30名で構成され、航海ごとに乗組員の交代があります。また、航海士・機関士は外国人の船員とペアになり仕事を進めます。入社前は英語でのコミュニケーションに不安を感じており、さらには自分よりも乗船経験がある船員がほとんどだったため、部下への指示の出し方に悩みましたが、航海士として安全に運航を終えること、何十億円にも及ぶ貨物を無事に輸送することを第一に考え、部下の意見を聞きながらも自分の意見もしっかり伝えることを常に意識。また、新人の時に意識して勉強したことで英語での意思疎通が円滑になり、クルーとの日常会話も弾むようにもなりました。
船は乗組員一人ひとりが役割を全うすることで運航できています。勤務年数や年齢は関係なく、どの役割でも欠けてしまうと船は運航できません。だからこそ、信頼関係の構築や安全運航のために、お互いに話しやすいチームづくりを入社当時から心がけています。
海上勤務時 01
海上勤務時 02
入社後の経歴
0:00
航海当直開始。船の安全を監視する。
4:00
航海当直終了。問題なく航海ができている。
5:00
巡検後に就寝。しっかり体を休める。
10:00
お茶会・メール確認。
11:00
航行警報の確認・昼食。
12:00
航海当直開始。2回目の航海当直。
16:00
航海当直終了。今回も異常なし。
17:00
航海計画の立案。次回の準備も念入りに。
18:00
筋トレ仲間とトレーニングを行い、リラックス時間。
19:00
先輩が作ってくれるおつまみを楽しむことも。
20:00
映画を見たり、ネットサーフィンをしたりして、就寝。
0:00
船が錨を下ろして停泊する錨泊当直スタート。
4:00
錨泊当直終了。無事に終えられた。業務を確認。
5:00
巡検後、就寝。安全に運航中。
9:00
入港部署。
10:00
船用品・食料の積み込みを行う。
11:00
昼食。ホッと一息。
12:00
荷役当直開始。
16:00
荷役当直終了。
18:00
次の航海の航路・気象・ETA確認。
20:00
次回の当直に向けて、就寝。
2018年1月~2018年5月
バルクキャリアに次席三等航海士として初乗船。主席三等航海士になるための基本的な知識を学んだ。
2018年10月~2019年4月
バルクキャリアに主席三等航海士として乗船。初めて船上での年越しとなり、船員に喜んでもらえるようなイベントを企画した。
2019年8月~2020年2月
コンテナ船でスエズ・シンガポール・ジブラルタル海峡を通峡、航海の難所である中国沿岸を多く航行し、経験が深まった。
2020年6月~2020年10月
LNG船に三等航海士として乗船。二等航海士になるための知識を吸収。
2020年11月~2021年4月
LNG船に二等航海士として乗船、アジア~豪州航路に加え、ドライドック作業にも従事。
2021年8月~2022年2月
LPG船に二等航海士として乗船、北米のLPGを日本、中国、トルコと世界各所に届けた。
2022年6月~2023年2月
自動車船に二等航海士として乗船、日本~北米を5往復航海。
2023年5月
香川県坂出市にて新造LPG船の艤装作業。
2023年6月~2023年12月
艤装員として携わったLPG船に二等航海士として乗船、テキサスと日本を2航海。
DAY OFF
オフの日の過ごしかた
乗船中の休みは他の乗組員と料理をして楽しんだり、カラオケやバスケットボール、テレビゲームをしたりすることもあります。下船後の休暇期間では、国内外問わず旅行することが多いです。これまでセブ島や韓国、フロリダのディズニーランドにも行きました。また、旅行中は何か一つ新しい経験をしようとアクティビティに挑戦することが多いです。私生活を充実させることで、リフレッシュした気持ちで仕事に向かうことができます。
学生のみなさんへ
私が川崎汽船での仕事を続けられている理由の一つに、毎日同じことを繰り返しているという憂鬱な感覚に陥らないことが挙げられます。乗船期間は平均して半年間ほどで、毎回船もメンバーも入れ替わるため、フレッシュな職場・メンバーで働くことができます。おかげでさまざまな関係性を築くことができ、多様な考え方に触れることができるのは船乗りの最大の魅力だと思います。現在は各国のコロナ対応も緩和され、寄港地で観光を楽しむこともできます。ぜひ、日常ではできない経験を一緒に体験しましょう。